金沢市では1999年3月より、交通不便地域のモビリティ向上、高齢者などの日常的な足としての地域内移動を支援、中心市街地へのアクセス改善と活性化などを目的に、「金沢ふらっとバス」を運行してきました。コロナ禍の影響や利用者の減少などを機に、持続可能なふらっとバス運行を検討した結果、さまざまな見直しとともに需要喚起につながる新たな利用者サービスの一環として、「バスキャッチ」によるバスロケーションシステムが導入されました。
「バスキャッチ」の導入と活用について、金沢市 都市政策局 歩ける環境推進課 主任技師 谷津成輝様、同 主事 平 至弘様にお話を伺いました。
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主任技師
谷津成輝 様
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主事
平 至弘 様
目次
金沢市内4ルートを走る「金沢ふらっとバス」
金沢市が運行する「金沢ふらっとバス」では、2021年7月1日より「バスキャッチ」を導入し、利用者向けにバスロケーションサービスを提供しています。最初に「金沢ふらっとバス」について教えてください。
「金沢ふらっとバス」は1993年度より検討が始められ、実際に運行が開始されたのは1999年3月28日です。もともと金沢市は藩政期に形づくられた不整形な細街路や坂道が多く、市内中心部にも公共交通の空白(不便)地域が存在しています。交通渋滞や駐車場問題などもあり、市中心部へのアクセスの悪化、中心市街地の空洞化も起きていました。同時に高齢社会、福祉社会も進展していました。
そのような課題を解決すべく、交通不便地域のモビリティ向上、高齢者などの日常的な足として地域内移動を支援、中心市街地へのアクセス改善と活性化、さらに人々の交流を活性化し、地域コミュニティの形成支援とマイカー依存型の都市内移動からの脱却に寄与することを目的に、「金沢ふらっとバス」の運行を目指しました。
そこから、高齢者・障害者などのためのモデル交通計画策定調査を実施し、コミュニティバス導入に向けた検討を経て、運行開始に向けた諸準備が始りました。バスの走行ルート、環境の調査、バス停設置に関する協議、実際に運行を担う交通事業社との協定締結、そして1999年3月28日に此花ルートの運行を開始し、現在では此花ルートに加え、菊川ルート、材木ルート、長者ルートの計4ルートの運行しています。コミュニティバスでは全国で初となるPTPS(公共車両優先システム)を導入し、交通機関の利用拡大、定時運行、安全性の確保に努めています。車両とバス停のデザイン、愛称の検討が行われました。
そして1999年3月28日に此花ルートの運行を開始し、現在では此花ルートに加え、菊川ルート、材木ルート、長者ルートの計4ルートの運行しています。コミュニティバスでは全国で初となるPTPS(公共車両優先システム)を導入し、交通機関の利用拡大、定時運行、安全性の確保に努めています。
「金沢ふらっとバス」を利用されるのはどのような方ですか。
利用対象者として、主に高齢者と主婦層を想定しています。日常的な買物や所用、繁華街への買物、病医院への通院、公共施設や福祉施設などへの外出といった目的での利用を考えています。運行により公共交通空白(不便)地域の解消、中心市街地や交通結節点を通るルートを設定しています。料金も1コイン(大人100円、子ども50円)の気軽さと分かりやすさと、バス停の間隔も高齢者が無理なく歩けるよう200mを目安としています。また、駐車場サービス券を乗車券として利用できるようになっており、バス利用の促進をしています。
「金沢ふらっとバス」の運行を持続可能なものに
2021年7月1日より「バスキャッチ」を導入いただいた背景には、どのような課題があったのですか。
検討の結果、運行ネック解消、利便性向上につながるダイヤ・ルートの見直し、サービス向上につながる施策の実現に向けての取組み、路線の認知・利用の意識醸成を図る、といった提言をいただきました。
その提言をもとに具体的なダイヤやルートなど運行の見直しを進め、需要喚起につながる新たな利用者サービスとして、キャッシュレスシステムの導入、バスロケーションシステムの導入、高齢者公共交通乗車券購入費助成制度、沿線住民ヘのモビリティ・マネジメントなどの案が作成されたのです。
「金沢ふらっとバス」の運行を持続可能なものにするための検討に伴い、新たな施策の一つとしてバスロケーションシステムに着目されたのですね。
まちバスではいち早くバスロケーションシステムを導入しており、そのシステムがバスキャッチでした。実績あるシステムということで、「金沢ふらっとバス」でもバスキャッチの導入に向けて、2020年度より準備を進めました。
バス停にQRコードを設置
バスキャッチ以外にもバスロケーションシステムはありますが、比較検討などはされなかったのでしょうか。
バスキャッチの導入はスムーズに進んだのでしょうか。
リアルタイムでバスの運行状況が把握でき、利用者の利便性が向上
導入されてから1年半超が経過しましたが、バスキャッチの導入の効果についてはいかがでしょうか。
スマートフォンでQRコードを読み取って、パスロケーションシステムの運行状況へのアクセスを見ると、2021年7月1日~2022年3月31日の総アクセス数は約6万3000回となっています。それが2022年度は4月1日~2023年1月までで約8万5000回に増加しました。バスロケーションシステムを使ってバスの運行状況が確認できることが、徐々にではありますが浸透してきていることが数字からも見て取れます。
やはり、リアルタイムでバスの運行状況が把握できることで、利用者の利便性向上につながっているのではないかと思います。バスの運行状況に関する問い合わせが入ったときは、バスロケーションシステムですぐに確認できますから、「少し遅れています」といったようにお伝えすると、市民の方は安心しますし、私たち金沢市にとっても導入のメリットがあります。
金沢市としての導入のメリットとはどのようなことですか。
金沢ふらっとバスの運行状況がリアルタイムで確認できることで、有事の際の対応などは以前よりスムーズにできるようになったと思います。例えば積雪の際、まれにですがバスが迂回することがあります。その際も積雪の影響で実際にどれくらいバスが延滞しているのかがわかれば、迂回を検討する際の判断材料の一つとして役立っています。
コロナ禍が多少落ち着きを見せる中、利用者数は回復傾向にあるのでしょうか。
2021年度は約50万人、2022年度は12月までの数字ですが約52万人です。若干ではありますが戻りつつあるのではないかと思います。バスロケーションシステムがこの戻ってくる利用者数にも寄与してくれることを期待しています。
他の自治体や企業での活用例を共有し推進していく
バスキャッチの今後の活用予定、またVISH株式会社とバスキャッチへのリクエストなどがありましたらお教えください。
やはり高齢者の中にはスマートフォンを使用していない方もいますので、そうした方にいかに浸透させるのかは課題の一つです。
利用者データに基づいた施策を今後も検討していきたいと思いますので、バスキャッチで得られるデータの活用方法や、他自治体が運用している活用例など共有していただき、今後もさまざまな新しいモビリティサービスとしての取り組みを実施していきたいです。